業務災害と因果関係
業務災害に対する保険給付は、労働者が労災保険の適用される事業場に雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われます。
[業務上の負傷について]
ポイントとして3つあげられます。
「事業主の支配管理下で業務に従事している場合」
所定労働時間内や残業時間内に事業場施設内において業務に従事している場合が該当します。
しかし、次のようなケ-スは業務災害とは認められません。
① 労働者が就業中に私用(私的行為)を行い、又は業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害を被った場合
② 労働者が故意に災害を発生させた場合
③ 労働者が個人的なうらみなどにより、第三者から暴行を受けて被災した場合
④ 地震、台風など天災地変によって被災した場合(ただし、事業場の立地条件や作業条件・作業環境等により、天災地変に際して災害を被りやすい業務の事情があるときは、業務災害と認められます。)
「事業主の支配管理下ではあるが業務に従事していない場合」
昼休みや就業時間前後に事業場施設内にいて業務に従事していない場合が該当します。
出社して事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の支配管理下にあると認められますが、休憩時間や就業前後は実際に業務をしてはいないので、行為そのものは私的行為です。
この場合、私的な行為によって発生した災害は業務災害とは認められませんが、事業場の施設・設備や管理状況等が原因で発生した災害は業務災害となります。
用便等の生理的行為等については、事業主の支配下にあることに伴う行為として業務に附随する行為として取り扱われますので、この場合には就業中の災害に準じて業務災害として認められない場合を除いて、施設の管理状況等に起因して災害が発生したかということに関係なく業務災害となります。
「事業主の支配下にはあるが、管理下を離れて業務に従事している場合」
出張や社用での外出等により事業場施設外で業務に従事している場合が該当します。
この場合、事業主の管理下を離れてはいるものの、労働契約に基づき事業主の命令を受けて仕事をしているわけですから事業主の支配下にあり、仕事の場所はどこであっても、積極的な私的行為を行うなど特段の事情がない限り、一般的に業務に従事していることから、業務災害について特に否定すべき事情がない限り、一般的には業務災害と認められます。
[業務上の疾病について]
業務上の負傷よりも、疾病の方が労災認定の判断が難しいでしょう。
業務上疾病とは、労働者が事業主の支配下にある状態において発症した疾病ではなく、事業主の支配下にある状態において有害因子にばく露したことによって発症した疾病を言います。
例えば、労働者が就業時間中に脳出血を発症したとしても、その発症原因に足り得る業務上の理由が認められない限り、業務と疾病との間に相当因果関係は成立しません。
一方で、就業時間外における発症であっても、業務上の有害因子にばく露したことによって発症したものと認められれば(例えばその事案が起こる直前まで過酷な長時間労働があったetc)、業務と疾病との間に相当因果関係は成立し、業務上疾病と認められます。
一般的に、労働者に発症した疾病について、次の3要件が満たされる場合には、原則として業務上疾病と認められます。
「労働の場に有害因子存在していること」
この場合の有害因子は、業務に内在する有害な物理的因子、化学物質、身体に過度の負担のかかる作業態様、病原体等の諸因子を指します。
「健康障害を起こしうるほどの有害因子にばく露したこと」
健康障害は、有害因子へのばく露によって起こりますが、当該健康障害を起こすに足りるばく露があったかどうかが重要です。
このようなばく露の程度は、基本的には、ばく露の濃度等とばく露期間によって決まりますが、どのような形態でばく露を受けたかによっても左右されるので、これを含めたばく露条件の把握が必要となります。
「発症の経過及び病態」
業務上の疾病は、労働者が業務に内在する有害因子に接触し、又はこれが侵入することによって起こるものなので、少なくともその有害因子へのばく露開始後に発症したものでなければならないことは当然です。
しかし、業務上疾病の中には、有害因子へのばく露後、短期間で発症するものもあれば、相当長期間の潜伏期間を経て発症するものもあり、発症の時期はばく露した有害因子の性質、ばく露条件等によって異なります。
したがって、発症の時期は、有害因子へのばく露中又はその直後のみに限定されるものではなく、有害因子の物質、ばく露条件等からみて医学的に妥当なものでなければなりません。
定期健康診断
対象は常時雇用する労働者とされ、正社員が該当します。
また、パート、アルバイトなど正社員以外の従業員も1日の所定労働時間や1週間の所定労働時間、1ヶ月の所定労働日数等が正社員の4分の3以上の場合(社会保険加入要件を満たしている方)は、常時雇用する労働者とみなされ、対象になります。
[健康診断項目]
既往歴及び業務歴の調査
自覚症状及び他覚症状の有無の検査
身長、体重、視力及び聴力の検査
胸部エックス線検査及び喀痰検査
血圧の測定
貧血検査
肝機能検査(GOT、GPT及びγ-GTPの検査)
血中脂質検査(血清総コレステロール、HDLコレステロール、トリグリセライド)
血糖検査
尿検査
心電図検査
健康診断の結果は、5年間の保管が義務付けられ、常時50以上の労働者を雇用する場合は労働基準監督署への報告義務もあります。
入社したばかりの従業員が同月に退社してしまった場合の社会保険料は?
しかし、入社したばかりの社員が直ぐに退社してしまったなんていうケ-スよくみかけます。
しかも入社した同月に!
そんな場合、社会保険料はどうなるのでしょうか?
通常は退職日の翌日(資格喪失日)の属する月分の社会保険料(健康保険料および厚生年金保険料)は発生しませんが、同月に資格取得喪失した場合は1ヶ月分が徴収されるのが大原則です。
健康保険料はその大原則が当てはまります。
つまり、会社の社会保険料(健康保険)もその月分を徴収されますし、その後、同月ご自分で国民健康保険または次の会社の社会保険(健康保険)に加入してもその月分の健康保険料は1か月分徴収されます。
しかし、厚生年金保険についてはこの大原則は当てはまりません。
月初めに会社の社会保険(厚生年金保険)に加入し、退社してからは国民年金に加入したとすれば、その月は後に入った国民年金被保険者となります。
要するに、会社としては健康保険厚生年金保険資格取得手続きをしてしまった社員が同月に退社してしまった場合、日割り計算になるであろう給与からは社会保険料としては健康保険料1か月分と雇用保険料を控除すればよいのです。
安全衛生管理体制
また、更に一定規模の人数になると、総括安全衛生管理者の選任ともなりますが、ここでは中小企業規模のご説明にしておきます。
50人未満の小規模事業場にあっては、安全衛生推進者、衛生推進者の選任を義務づけられています。
それを表にまとめたのが下記です。
林業 鉱業 建設業 運送業 清掃業 (令2条1号の業種) | 製造業、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業、家具・建具・じゅう器等卸売業、各種商品小売業、家具・建具・じゅう器小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業、自動車整備業、機械修理業 (令2条2号の業種) | その他の業種 (令2条3号の業種) | |||
50 ~ 99 | 事業者は 安全管理者 衛生管理者 産業医 を選任 | 50 ~299 | 事業者は 安全管理者 衛生管理者 産業医 を選任 | 50 ~999 | 事業者は 安全管理者 衛生管理者 産業医 を選任 |
10 ~ 49 | 事業者は 安全衛生推進者 を選任 | 10 ~ 49 | 事業者は 安全衛生推進者 を選任 | 10 ~ 49 | 事業者は 衛生推進者 を選任 |
1 ~ 9 | 事業者が 安全管理する。 | 1 ~ 9 | 事業者が 安全管理する。 | 1 ~ 9 | 事業者が 安全管理する。 |
[安全管理者]
安全管理者は安全に関する技術的事項を管理することとなっています。
① 建設物、設備、作業場所または作業方法に危険がある場合における応急措置または適当な防止の措置(設備新設時、新生産方式採用時等における安全面からの検討を含む。)
② 安全装置、保護具その他危険防止のための設備・器具の定期的な点検及び整備
③ 作業の安全についての教育及び訓練
④ 発生した災害原因の調査及び対策の検討
⑤ 消防及び避難の訓練
⑥ 作業主任者その他安全に関する補助者の監督
⑦ 安全に関する資料の作成、収集及び重要事項の記録
⑧ その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における安全に関し、必要な措置 など
[衛生管理者]
衛生管理者は衛生に関する技術的事項を管理することとなっています。
① 健康に異常のある者の発見
② 作業環境の衛生上の調査
③ 作業条件、施設等の衛生上の改善
④ 労働衛生保護具、救急用具等の点検及び整備
⑤ 衛生教育、健康相談その他労働者の健康保持に必要な事項
⑥ 労働者の負傷及び疾病、それによる死亡、欠勤及び移動に関する統計の作成
⑦ その事業の労働者が行う作業が他の事業の労働者が行う作業と同一の場所において行われる場合における衛生に関し必要
な措置
⑧ 衛生日誌の記載等職務上の記録の整備
など
[産業医]
産業医は主に次の事項を行うこととされています。
① 健康診断及び面接指導等の実施並びにこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること
② 作業環境の維持管理に関すること
③ 作業の管理に関すること
④ 労働者の健康管理に関すること
⑤ 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること
⑥ 衛生教育に関すること
⑦ 労働者の健康障害の原因の調査及び再発防止のための措置に関すること
また、産業医は、少なくとも毎月1回作業場等を巡視し、作業方法または衛生状態に有害のおそれがある時は、直ちに、労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じなければなりません。
[安全衛生推進者等]
安全衛生推進者等の職務は
(1) 施設、設備等(安全装置、労働衛生関係設備、保護具等を含む)の点検及び使用状況の確認並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関すること。
(2) 作業環境の点検(作業環境測定を含む)及び作業方法の点検並びにこれらの結果に基づく必要な措置に関すること。
(3) 健康診断及び健康の保持増進のための措置に関すること。
(4) 安全衛生教育に関すること。
(5) 異常な事態における応急措置に関すること。
(6) 労働災害の原因の調査及び再発防止対策に関すること。
(7) 安全衛生情報の収集及び労働災害、疾病・休業等の統計の作成に関すること。
(8) 関係行政機関に対する安全衛生に係る各種報告、届出等に関すること。
無期労働契約の転換
同一の使用者との間で、有期労働契約が通算で5年を超えて繰り返し更新された場合は、労働者の申込みにより無期労働契約に転換します。
※通算契約期間のカウントは、平成25年4月1日以後に開始する有期労働契約が対象です。
◆ 通算契約期間の計算について(ク-リング)
■カウントの対象となる期間が1年以上の場合
有期労働契約とその次の有期労働契約の間に、契約のない期間が6ヶ月以上ある時は、その空白期間より前の有期労働契約は通算契約期間に含みません。(ク-リングされます)
その契約のない期間が6ヶ月未満の時は、前後の有期労働契約の期間を通算します。(ク-リングされません。)
■カウントの対象となる契約期間が1年未満の場合
カウントの対象となる有期労働契約の契約期間の区分と契約がない期間の区分に応じて、契約期間がリセットされます。(ク-リングされます。)
カウントの対象となる 有期労働契約の契約期間 | 契約がない期間 |
2ヶ月以下 | 1ヶ月以上 |
2ヶ月越~4ヶ月以下 | 2ヶ月以上 |
4ヶ月越~6ヶ月以下 | 3ヶ月以上 |
6ヶ月越~8ヶ月以下 | 4ヶ月以上 |
8ヶ月越~10ヶ月以下 | 5ヶ月以上 |
10ヶ月越 | 6ヶ月以上 |
◆ 通算契約期間の計算について(カウント方法)
①通算契約期間は「同一の使用者」ごとに計算
例えば、勤務先の事業場(事業所)が変わった場合でも、同じ事業主の事業場(事業所)間の異動であれば、契約期間に通算されます。
②労働契約の存続期間で計算
育児休業等で勤務しなかった期間も、労働契約が続いていれば通算契約期間にカウントされます。
③暦を用いて、「年」「月」「日」の単位で行う
契約期間の初日から起算して、翌月の応答日(月違いの同日)の前日をもって1ヶ月とする。
複数の契約期間については、1ヶ月未満の端数がある場合は、その端数同士を合算した後、30日をもって1ヶ月に加算する。
働き方改革関連法案施行について
2019年4月1日施行 (中小企業 は2020年4月1日 施行 )
時間外労働の上限は、月45時間 、年360時間を原則 とし、 臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間 、単月100時間未満 (休日労働を含む)、複数月平均 80時間 (休日労働を含む)を限度に設定する必要があります。
『時間外労働 及び休日労働 に関する協定届 』36協定 を労基署に提出する際、特別条項付協定を結ぶ場合は、 上記の上限に注意 しなければなりません。
◆年次有給休暇の確実な取得として、 毎年5日、時季を指定
2019年4月1日施行
使用者は10日以上の年次有給休暇 が付与されている全ての労働者に対 し、 年5日 、時季を指定 して有給休暇 を与える必要があります。
※この年次有給休暇の付与について、 幾つかの疑問点 (本人が請求付与 した有給休暇以外に会社が5日時季を指定して与えるのか?等)がありますが、 現時点において集められる資料ゆえ、 それらの疑問点はわかり次第後日お知らせ致します。
◆正規 雇用労働者と非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差を禁止
2020年4月1日施行 (中小企業 は2021年4月1日施行 )
同一 企業内 において、 正規雇用労働者と非正規雇用労働者 (パ-ト、 有期雇用労働者 、派遣労働者 )の間で、 基本給や賞与等の個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止されます。
※この 「不合理な待遇差 」という ものが、 どの程度の範囲内か具合的 な資料が回ってきいないので、 その疑問点につきましてもわかり次第後日お知らせ致 し ます。
出向労働者は何処で適用させる?
出向先事業主の指揮監督を受けて労働に従事する場合で、出向元で支払われている賃金も出向先で支払われている賃金に含めて計算し、出向先で対象労働者として適用させます。
つまり、仮に出向先の賃金はゼロで出向元でしか賃金を受けていない場合でも、労災保険の計算においては、その出向元の賃金の数字を出向先に計上しなければなりません。
特に労災保険については誤った計上をする事例が多いので気をつけましょう!
雇用保険については
出向元と出向先の2つの雇用関係を有する出向労働者は同時に2つ以上の雇用関係にある労働者になるので、その者が生計を維持するのに必要な主たる賃金を受けている方の雇用関係についてのみ雇用保険被保険者となります。